13:25--13:30 | 代表者挨拶 |
13:30--14:15 | 芳松克則 (名大未来研) |
自由減衰一様乱流の大スケールにおける永続性 | |
14:15--15:00 | 小林未知数 (高知工科大理工) |
量子流体中の量子渦ダイナミクスにおける時間の矢 | |
(休憩) | |
15:30--16:15 | 高棹真介 (阪大宇宙地球) |
原始星まわりの乱れた磁場が生じる流れ | |
16:15--17:00 | 福本康秀*(九大マス・フォア研), ZOU Rong (ハワイ大) |
理想電磁流体方程式の南部括弧表現とその応用 |
13:30--14:15 | 田之上智宏 (京大理) |
乱流カスケードにおける情報伝達の情報熱力学的限界 | |
14:15--15:00 | 水野吉規 (気象研究所) |
不安定成層下の乱流境界層における大規模乱流構造 | |
(休憩) | |
15:30--16:15 | 佐野涼太郎(京大理) |
空間反転対称性の破れた電子流体力学における異常輸送現象 〜固体中の流体力学〜 | |
16:15--17:00 | 石川拓司 (東北大医工) |
バクテリア乱流の形成メカニズム |
芳松克則 (名大未来研)
自由減衰一様乱流の大スケールにおける永続性
3次元非圧縮一様乱流の自由減衰について, 理論解析と直接数値計算を用いて調べた. 十分小さな波数において, ある時刻の速度相関スペクトルテンソルが波数のゼロ次のオーダーであり, 任意の非対称性を許容している場合を対象とする. その時刻でのエネルギースペクトルは波数の自乗に従っている. 理論解析により, 乱流がある種の自己相似な発展をする状態では, エネルギー保有領域も含む大スケールにおける任意の非対称性が永続することが示される. この理論と直接数値計算の結果はよく整合する.
小林未知数 (高知工科大理工)
量子流体中の量子渦ダイナミクスにおける時間の矢
量子流体のダイナミクスを記述する数学的枠組みの一つとしてよく知られているのが非線形シュレディンガー方程式である。非線形シュレディンガー方程式は量子渦のつなぎ替えを自然に記述することができるが、方程式が持つ時間反転対称性により、つなぎ替えには順方向・逆方向の概念はないように見える。ところがつなぎ替えのシミュレーションを行ってみると、明らかにつなぎ替えが起こりやすい配置、起こりにくい配置があり、つなぎ替えの順方向・逆方向があるように見える。これを特徴づける量として量子渦の位相ひねりという量が背後で重要な役割を果たしていることが分かってきた。シンプルなつなぎ替えに始まり、量子乱流のダイナミクスまで、位相ひねり数の振る舞いを紹介する。
高棹真介 (阪大宇宙地球)
原始星まわりの乱れた磁場が生じる流れ
星はガスが重力によって収縮することによって誕生する。ただし一般にガスは角運動量を持ち、かつ磁場を持っているため、収縮するガスは原始星のまわりに磁化した回転ガス円盤を形成する。本講演では、システムにおいて最もエネルギー密度の高い原始星近傍で起きる、円盤内の乱れた磁場が生じる降着流や円盤風と言われる噴出流について磁気流体シミュレーション結果にもとづいて議論する。
福本康秀*(九大マス・フォア研), ZOU Rong (ハワイ大)
理想電磁流体方程式の南部括弧表現とその応用
理想電磁流体力学(MHD)に対して,ネーターの定理は、粒子のラベル付け対称性に対する保存量がクロスヘリシティのみであることを示す.これをヒントに,理想電磁流体力学方程式の南部括弧表現を書き下す.これから誘導されるLie-Poisson括弧はよく知られた表現を拡大したもので,クロスヘリシティがカシミール不変であることを自動的に保証する.南部括弧表現を援用して,オイラーポアンカレ方程式,定常解に対するArnoldの定理,そして,波のエネルギーのMHD版を導く.
田之上智宏 (京大理)
乱流カスケードにおける情報伝達の情報熱力学的限界
十分発達した乱流にみられる準周期現象やカオス同期現象は、カスケードに伴って大スケールから小スケールへある種のロバストな情報伝達が行われていることを示唆しているように思える。本講演では、情報熱力学的観点から明らかになってきた乱流中の情報の流れについて報告する。具体的には、シェルモデルに対して、(i)大スケールのシェル変数は小スケールのシェル変数の情報を利用しながらエネルギーを輸送する一方で、(ii)小スケールは大スケールの情報を「学習」しながらエネルギーを受け取っており、(ii)これらの情報伝達速度にはエネルギー散逸率で決まる普遍的上限が存在することを示す。
水野吉規 (気象研究所)
不安定成層下の乱流境界層における大規模乱流構造
水平な固体境界面上に形成される不安定温度成層下の乱流境界層において、特に水平方向に大きなスケールにおける乱流の振る舞いを考える。最初にこのような問題を考える背景を述べた後、最近実施している風洞実験の結果を紹介する予定である。
佐野涼太郎(京大理)
空間反転対称性の破れた電子流体力学における異常輸送現象 〜固体中の流体力学〜
近年の結晶成長技術の発展をうけ、「流体力学領域」と呼ばれる電子系の新たな非平衡領域が急速に開拓されつつある。この領域における電子系のダイナミクスは「電子流体力学」によって記述されることが知られており、2016年のグラフェンでの実現[1]を契機に様々な物質群で報告され始め、今まさに物性物理学に新たな潮流を生み出しつつある。加えて、流体力学的な非線形性は、ダイナミクスの不安定化や乱流のような非摂動的現象を創発しうる。これらの現象が固体中においてどのように発現し、観測量にどのような影響を及ぼすのかという問題は極めて魅力的であるとともに、固体における新しいクラスの非摂動的非平衡現象の提案にも繋がることからも、物性物理学分野にブレイクスルーをもたらすと期待される。
本講演では、近年急成長を遂げている「電子流体力学」について紹介したのち、「空間反転対称性の破れ」をテーマに、磁場中における非相反光学応答を流体力学的なアプローチから考察する[2]。特に、電子流体力学では結晶対称性やBloch電子の幾何学的位相など固体に特有な性質が流体力学に直接反映されると期待される。そこで、電子流体力学が内包する様々な研究分野との密接な関連性を見出すことで、この分野の隠れた可能性・重要性を引き出すことを目指しつつ、これから歩むべき方向についても考えたい。
[1] D. Bandurin et al., Science 351, 1055 (2016).
[2] R. Sano, R. Toshio, and N. Kawakami, Phys. Rev. B 104, L241106 (2021).
石川拓司 (東北大医工)
バクテリア乱流の形成メカニズム
バクテリアの懸濁液では、まるで乱流のように時空間的に乱れた流れが形成される。形成される渦はバクテリアよりもかなり大きなスケールであることから、バクテリアが自己組織化して大規模な流れ構造を生み出していると考えられる。この流れは通常の乱流とは異なり、エネルギーが小さなスケールから大きなスケールへと輸送される。本研究では、実験と数値シミュレーションを用い、バクテリア乱流の特徴とその形成メカニズムの解明を目指す。
松本剛 takeshi あっと kyoryu.scphys.kyoto-u.ac.jp