流体物理学ゼミナール2007/04/11


流体力学セミナー 2007 No. 1

日 時 : 07年 4月 23 日 (月) 15:00〜16:30

場 所 : 京大数理研 009号室

講 師 : 河井洋輔
(京都大学人間環境学研究科相関環境学専攻)

題 目 : 非中性プラズマを用いた2次元流体緩和過程に関する実験的研究

内 容 :

単一荷電粒子の集合である非中性プラズマを、円筒容器内に軸方向には電場、
径方向には磁場を用いて閉じこめると、磁気軸に垂直な断面内でのマクロな運
動が非圧縮性2次元Euler流体の運動と等価になる。この時電子密度が渦度に、
自己ポテンシャルが流れ関数に対応する[1]。

初期条件として Kelvin-Helmholtz 不安定な密度分布を形成すると、密度分布
は複数個の渦を形成して乱流状態となり、渦間の合体を繰り返して準安定な渦
配位を形成し終状態に達する。

この2次元乱流緩和過程について、計測した渦度分布とそれより導出したエネ
ルギースペクトルから既存の乱流理論との比較を行った。更に初期条件を精密
に制御して、乱流の基礎過程となる2渦間の合体について詳細な検討を行った。

緩和過程の終状態では渦が対称的な格子状配位を形成する“渦結晶”と呼ば
れる現象が観測される[2]。この現象を乱流緩和過程よりも数百倍長いタイム
スケールで観測すると、格子渦の数が時間の対数に依存して減少している事が
判った。

乱流の緩和過程では渦数が時間のべき乗則に依って減少する事が理論より予測
されており、準安定分布の緩和過程がそれとは異なる機構によって進行してい
る事が示唆される。

[1] C. F. Driscoll and K. S. Fine: Phys. Fluids B 2 (1990) 1359.
[2] K. S. Fine, et al.: Phys. Rev. Lett. 75 (1995) 3277.
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