我々の研究テーマですが、現在大きく分けて“乱流”と“波”を扱っています。

乱流

乱流は強く乱れた状態で、分子粘性に比べ極めて大きな散逸効果 (拡散性)を示します。 この散逸性は統計的に理解されるべきですが、残念ながら未だに確立した理論はありません。乱流散逸過程はある種の相似性を持っていますので、大きな渦が小さな渦に壊れていくという描像がしばしば想定されます。この描像に基づく散逸領域のフラクタル性を仮定した現象論は、乱流現象の一面を見通しよくしました。しかし、乱流中で何が起こっているのかはまだわかっていないのです。基礎となる素過程がわからない以上、理論が完成されないのも当然です。そのため大規模な数値シミュレーションを行い、 グラフィクス等を利用し解析を試み、更に新しいアイデアを提案して素過程の解明に取り組んでいます。熱対流中の乱流は、大きなスケールの運動を生み出す機構をも内包しており、秩序と乱れが共存する不思議な現象で、研究対象の一つです。

非線形波動

連続体の中を伝わる波の振幅が小さければ、個々の波を重ね合わせる事により全体の様子が理解できます。ところが、振幅が大きくなり波同士の相互作用が効くようになると 様子が一変します。統計力学的立場に立てば、エネルギー等分配の状態に落ちつくはずですが、実際には安定な秩序だった粒子的な波が出現します。これがソリトンと呼ばれる分散性非線形波動です。このソリトンも、空間次元を上げたり、散逸的な効果が加わると不安定になります。現実には、周期的な運動やカオスなどの複雑な振る舞いが見られ、 相互作用のあるソリトン集団として理解できる場合があります。 我々はこのような見方で複雑な現象を理解する研究を続けています。また、どうして海の表面に波が立つのか、波はどの様に成長するのか、といった当たり前の様な疑問も、実は未解決の問題です。